朝日 荒川中俣沢(中退でヒノキモッコ沢へ)

天候不順が続いた今年の夏。僕の住む仙台は36日連続雨・・・
転進を含め直前までルートは悩んだが、長雨で雪渓が少ないかもという期待を抱きつつ朝日の荒川へ向かった。結果的にはヒノキモッコ沢からのエスケープとなったものの、ヒノキモッコ沢はまずまず楽しめる沢だった。


<8月12日>(曇り後雨)
5:30針生平→10:00毛無沢出合→10:15曲滝→12:30綾滝/13:30綾滝先で巻き開始→15:00支尾根→17:00支尾根上でビバーク
前日、白石蔵王でパートナーをピックアップして2時間ほどで小国着。道の駅で仮眠を取ってから早朝に車を走らせる。
針生平から歩き始めたがアブは少なめ。雨が続いているが水はやや多いくらいで、これなら入渓できそう。快適なハイキングからだんだん細くなる吊橋を通り、最後は恐怖の一本吊橋をこなして大玉沢の出合から入渓する。入渓点からしばらくは単調な河原歩きを続くが、ナベクラ沢のあたりからゴルジュ地形となりようやく沢らしくなって来る。

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最初の淵は少し長めの泳ぎ。増水と曇天のせいかえらく体が冷える。今日はあまり体を濡らさないほうが良さそうだ。ここから先はヘツリを駆使しながら歩みを進めた。その後、正面に岩壁が迫ってきた辺りで1つ目のスノーブリッジが登場。これは右を簡単に巻けた。

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間もなく左手に毛無沢が出合う。険谷と名高いが出合から膨大な雪渓が詰まっており、威圧感が凄い・・・。毛無沢の出合にもスノーブリッジがかかるが、小さいので一気に潜る。毛無沢からほどなくして20m曲滝。逆くの字の豪快な滝だ。ここは左のルンゼ状を登ったがヌメリが多く緊張した。曲り滝の上にはちょっとした砂地があり幕営適地になっている。ここを過ぎるとしばらく適地はないが、まだ早過ぎるので先を急ぐ。

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曲滝を過ぎると3つ目のスノーブリッジ。比較的安定していそうだったので一気に潜るが、抜けた先は巨大ブロックが散乱しておりかなり危険な状況。右岸の高台からブロックを避けられそうなラインを検討し、左岸を慎重にヘツりながら突破した。ここはかなり緊張した。

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 そこからいくつか小滝を越えると2段8mの綾滝。1段目は右から登り、水流を潜ってから2段目は左から。日が差さない中でのシャワークライミングだったが快適だ。このあたりまでは順調だった。

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 綾滝の先のゴルジュは偵察したが少々厳しそうなので、左岸の藪に1Pロープを伸ばして高巻き。本来は西俣沢の出合付近に降りるつもりだったが、高巻き中に大きな雪渓が確認できたため降りても時間を食うだけと判断し、西俣沢出合の先の大滝もまとめて巻いて上に降りるつもりで尾根に上がった。
尾根に上がるとタイミング悪くガスが下がってきて視界が効かなくなってくる。尾根を下降して大滝上へ下降しようとしたが、尾根末端に来た所で時間は16時半。下降用の支点が取れるか確信も持てない・・・軽量化としてロープは1本しか持ってこなかったのが裏目に出たようだ。変に頑張ってハマるのも怖いので、ヤブの中でタープを広げてビバークする事にした。

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水は2人合わせて1リットルほど。酒のツマミとα米を食べて早々に就寝。何とか横にはなれたがなかなかの傾斜地。体がズリ落ちては目が覚め、ズリ落ちては目が覚め・・・長い夜だった。

<8月13日>(曇り)
5:00ビバークポイント発→7:00中俣沢出合付近に下降(釣りタイム)→9:30ヒノキモッコ沢へ→9:30~10:30下部ゴルジュ帯→13:30幕営
少しだけ残しておいた水でお湯を沸かし、お茶を飲んでから出発。喉が乾いていたのでタープに溜まった夜露をすする。結構美味しい。
まずは現状把握のため昨日下ってきた尾根を登り返し。100mほど高度を上げると視界の開けるポイントがあったので慎重に偵察する。すると、昨日はガスのため確認できなかったが中俣沢の出合近くに降りられそうな支尾根を発見。やはりハマった時は一度落ち着いてから観察した方が色々と見つかりやすいようだ。歩きと懸垂を交えて1時間ほどで沢床へ復帰。ここでゆっくり水を飲みながら大休止とし、今後の予定を話し合う。

時間的にはまだ中俣沢を目指しても問題無さそうだが、昨日の雪渓の状態を考えるとこの先も苦労するのは目に見えている。今回はロープ1本で来ているので無理せずヒノキモッコ沢へのエスケープを決定する。
そうと決まれば時間は余裕あるので釣りタイム。釣り下ったパートナーが速攻で良型をゲットし、さらにもう1匹をあげる。僕もここは入れ食いだ!!と意気込んで釣り上がるがなぜか反応なし・・・いないはずは無いのに何故だ・・・

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 気を取り直してヒノキモッコ沢へ入ると出合から100m程度のあいだに5-10m弱の滝が連続する。すべて登れるがどれも側壁立っているため高巻きは大変だろう。エスケープとは言えなかなか楽しめる。出合の連瀑帯を越えると後は特に困難なポイントは無し。イワナもかなり上までいたので竿を出しながら遡行した。

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標高が1100mを越えた辺りから沢が小さくなってきたので幕営適地を探すと、1150mあたりで右岸に小さな段丘を発見。かなり凹凸が大きいが土木工事で何とか寝られるスペースを確保した。

時間もあるのでゆっくり焚火を楽しんで昨晩の疲れを癒やす。酒もつまみも大放出で長い宴会を楽しんだ。

<8月14日>(曇り時々晴れ)
5:00幕営点発→6:30稜線→9:00大玉沢出合→10:15針生平
沢床を風が吹き抜けて結構冷えたせいか、3時頃には目が覚めた。薪も少ないのでガスで朝食を作って早々に出発する。幕営点から先は特に困難なポイントなく高度を稼ぎ、最後の標高差50m程度だけ藪を漕ぐと平岩山の肩にひょっこりと飛び出した。
稜線はトンボが飛び秋の気配。今年はいつにもまして短い東北の夏を思いながら下山した。

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<メモ>
・大高巻きは無いと考えロープ1本で行ったが、雪渓処理を考えるとロープを2本持つべきだった。一番の反省点。
・食材としてセブンプレミアムのサラダチキンを持っていったがなかなか優秀。火が通っているので調理が速い。また、そこそこ水気があるのでビバーク中にそのまま食べられた。
・ヒノキモッコ沢は出合のゴルジュ帯以外はエスケープとして特に問題ない。幕営点は少ないので時間に余裕あれば頑張って稜線~角楢小屋まで下山するのもあり。

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南ア 赤石沢北沢の遡行(2017/7/15-17) 

三連休は会越方面の沢を考えていたが、ここ最近の海の日連休は天気がイマイチ・・・と言う事で、天候予想に対応して北ア・南アの沢も並行してルート研究していた。

で、蓋を開けてみれば会越と北アの天気は今ひとつと言う事で南アの赤石沢北沢に転進。11年ぶりに赤石岳の山頂を踏みました。


【7月15日】晴れ
6:30畑薙ダム駐車場→11:40入渓→15:30取水堰→16:00北沢二俣

22時に都内を出て畑薙第一ダムまで約5時間…社会人になると本当に南ア南部は遠い。
それでも山開きという事もあって駐車場は大混雑。椹島までのバスは驚異の2時間半待ち!

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予定では8時半入渓のところ11時半ごろになってしまったが、入渓点から目指す赤石岳山頂が見えてテンションアップ。アルプスの沢は大きい!

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沢は赤いラジオラリア、青い水のコントラストが見事。超人気ルートと言う事で敬遠していたが、流石に名ルートは名ルートだ・・・。

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 出だしが遅れたぶん遡行はスピーディーに行きたいところだが、この日は取水堰で水を取っていないようで水量マシマシ。泳ぎ、ロープ渡渉、高巻きなど駆使しながら進んでいく。神ノ淵はよく観察して水線を突破。側壁を登るより時間をカットできた。

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16時頃北沢との出合に到着。足の揃ったパーティーなのでスムーズだったが、人によっては結構大変だったと思う。
ここで整地済み&薪ありの極上テン場を見つけたので幕営。急いで遡行してきたので釣りができなかったのは残念だが、特製牛丼&枝豆で乾杯。

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夜行の疲れから早々に就寝した。

【7月16日】晴れのち雨

5:00発→7:00標高1900m→8:30標高2000m→連瀑帯→13:45標高2350m(雪渓)→15:00登山道合流→16:20赤石岳避難小屋

北沢はあまり記録を見ないが、時間が押すことも考えて早めに出発。昨日途中で前後した京都雪稜クラブの皆さんも早々に本流へ向かっていった。
今日は山頂まで標高差1600m。本流とは異なり、北沢は出合からぐいぐいと高度を上げ、30分ほどで滝がかかり始める。

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 最初の2段15mは左からロープ、8mナメ滝も左から越える。1750m付近の15m滝は取り付いたものの厳しそうなので右のルンゼから高巻き、続く7mナメは左から。一瞬渓相が落ち着くものの1900m付近からは滝が連続。直登したり巻いたり・・・

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過去の記録より時期が早いこともあり、標高2000m当たりからは雪渓が登場する。このあたりが中流部のゴルジュ帯だが、ここから標高2350mあたりまでが核心だろう。

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2030m付近の30m滝は雪渓から飛び降りて左壁に取り付いたが、浮き石が多くて直登は困難。多少にマシに見えた左の凹角に逃げたが・・・悪かった。トラバースでロープを2ピッチ+沢床まで1ピッチで復帰できた。だいぶ時間を食ったが、ここで上手く抜けられないと場所的に敗退も大変なのでホッとした。次の10m滝は右壁を快適に登る。
この先も滝が連続するがあまり書いてもしょうがないので詳細は割愛。滝は立っているのが多いが巻きは素直なので行き詰まることはないだろう。(一箇所右巻きで処理した滝だけは草付泥壁系で悪かったが)
最後の核心となる3段50m滝は雪渓から左岸に移って高巻き。大高巻きになると覚悟していたが比較的容易に処理できた。
ここで核心は終了。あとは山頂カールまで延々と雪渓が続いている。

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長い雪渓歩きに疲弊した頃、赤石小屋からの登山道に合流。赤石小屋に降りたそうな2名の目線を無視()して赤石岳の山頂を目指す。前に来たのは大学1年の夏合宿。折角の機会なので10年ぶりに登っておきたいのだ。
山頂は残念ながらガスだったが、赤石岳避難小屋では小屋の主人や他の登山客の方と交流を楽しめた。
色々と食べ物を頂いたが、軽量化に努めた我々が出せるのは乾き物程度・・・皆さんありがとうございました。


【7月17日】雨のち晴れ
5:20発→6:50赤石小屋→8:50椹島

この日もあいにくの天気。そういえば前に来たときも赤石岳はガスだった・・・
ま、そういう相性ということだろう。
記念写真を撮ったら後はサクサクと下山。バス待ちの間に椹島でシャワーを浴び、静岡でさわやかのげんこつハンバーグを食べて渋滞中の東名高速で帰京。


【メモ】
・~北沢出合までは水量によって難易度が大きく変わる
・高巻きは比較的容易。ただし、滝は立ったものが多い。岩はヌメリ気味+少々脆い
・2000mより上は時期により雪渓が残るが、2350m付近まではゴルジュ地形。遡行時間は雪渓処理によって大きく変わると予想。
赤石岳に直接向かう雪渓は傾斜が急で危険。おとなしく登山道に出るのが良い

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kitazawa