スラブの大伽藍vol.2 白山 境川大畠谷右俣~開津谷下降

9月後半の飛び石連休は去年に続き、京都・東京・仙台チームで沢へ行ってきた。
南紀の沢が良いかと思っていたが、今年は白山の大畠谷をチョイス。
ゴルジュと奥壁というと今年の7月に行ったガンガラシバナを思い出すが、こちらはまた雰囲気の違う茗渓。天候に恵まれて素晴らしい山行になった。

<9月20日>(晴れ)

8:00桂橋-15:30奥の二俣
夜行バスで富山→マイカーと乗り継いで桂湖に到着。吊り橋から沢への下降は分かり辛かったので懸垂下降。

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快適なペースで遡行を続け、3人組の釣り人を抜かすと2段30m滝に出会った。両岸とも高巻けるようだが、見た感じで容易なのは左岸だろう。左岸から大きく高巻き、15mほどの懸垂で本流に復帰した。1時間半の大巻きだった。
下部ゴルジュ帯を抜けるとしばらくは河原なので快調に飛ばしていくが、途中で土砂に埋まったポンツーンを見かけたりして謎。ここらへんの山域でポンツーンというと金沢の某山スキーヤー界隈しか思い浮かばないが・・・(帰宅してから調べると、やはり例の人だった:http://w2222.nsk.ne.jp/~turu/MT.ski.2012.html )

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暫く行くと上部ゴルジュ帯。出てくる滝はどれも適度な難しさで退屈しない。7m滝は水流を潜り、続く8m滝は空身で右壁にロープを伸ばす。後の滝は全てフリーで突破出来た。

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上部ゴルジュ帯の最後の関門、40m滝は手前の左から入るルンゼを登ってから右岸をトラバース。小尾根を乗り越してから灌木を繋いでいくと落ち口ピッタリに出ることが出来た。慣れない人は懸垂下降しても良いかも知れない。

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上部ゴルジュ帯を抜けると深い切れ込みだった谷が徐々に開け、奥の二俣とスラブの大伽藍がその姿を見せ始める・・・。

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スラブの大岩壁というところで言うと7月に行ったガンガラシバナが思い出される所だが、規模は若干劣るものの傾斜が強く、こちらの方が威圧的である。

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つい最近人が来たらしく、整地済み&乾いた薪も豊富でなかなか良い所。岩壁と満点の星空に囲まれて快適な夜を過ごした。

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これをやりに来てる感 

 

<9月21日>(晴れ)
6:30発-8:00奥壁取付き-12:30上部ナメ-14:00開津谷へ下降開始-15:30開津谷二俣(976m地点)
秋の沢は寒いが虫が少ないのが良い。燃える岩壁に向かって歩みを進め、いよいよ右俣ゴルジュへ侵入する。

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出だしの滝はショルダーで左岸から右岸へ。この先のゴルジュ内部にツルツルの滝が見えたので右岸の壁にラインを見出そうとするが、脆すぎて断念。ゴルジュ内に戻ってハーケンを打ってA0。ホールドも少なく少々厳しかったがなんとか突破した。フォローはお助けやアブミで登ってもらう。

この先はどう考えても人類には登攀不能な滝が続いているので巻き(という名のスラブ帯の登攀)に入る。概ね4~5P、グレードはⅢ級ぐらいだろう。

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難しくないが残置もほぼ皆無なのでハーケンを打ちながら登ることとなる。また、岩が非常に脆く落石が頻発するためロープ切断やフォローに直撃しないようにルートや石を払いながらの登攀となり、高度感も相まって緊張する。
沢床に下り立ったのは12:30。岩が脆くプロテクションが乏しいため、落石の処理やルートファインディングに時間を使ってしまった。
ここから沢は一気に癒し系の渓相になるが、少し戻ってゴルジュを落ち口から眺めるとなんとも凄まじい渓相。いずれ侵食が進めば、この癒し系の渓相も大ゴルジュへと変わるのだろうか。

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上部は平凡な渓相

 

癒し系の沢を進むと次第にボサがかかって水流も細くなってくる。フィナーレを飾る40mナメ滝を登り、右手の稜線が低くなったあたりにルンゼを詰めると開津谷への乗越地点に到着。出だしこそ少し渋いが、開津谷に出合ってからはただのゴーロ帯。右岸上部に広がる仙人壁を眺めながらサクサク下っていく。

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威圧的な仙人壁。登った人はいるのだろうか

976mの二俣はビバーク適地かと思っていたが意外と快適な場所がないため、少し土木工事をしてスペースを確保。この日も焚き火と星空の下で快適なビバークとなった。

 

<9月22日>(晴れ)
6:40発-8:40 15m滝ー10:20 バックウォーター-11:00開津橋
今日は開津谷を下降するだけなのでのんびりとスタート。
最初の4連続の滝は右岸から高巻き。ルンゼから沢床への下降は少し渋いがノーロープで下りられた。

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15mの美瀑を下る

地形図上の魚留滝、ゴルジュの抜け口にかかる斜瀑と15m滝を懸垂で下りると、後はただの河原歩き。すぐにバックウォーターまで行けると思ったら堰堤が続き、左岸からの巻きが連発する。大して難しくはないが藪も濃いので無駄に消耗した。
バックウォーターからようやく出てきた林道を15分ほどあるくと開津橋。車を回収してから白川郷を観光し、岐阜で解散した。

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<メモ>
・大畠谷はゴルジュが多く幕営適地は少ない。下部ゴルジュ帯~上部ゴルジュ帯までの河原か、奥の二俣が適地となる。
 翌日の行程を考えると奥の二俣まで伸ばしておいた方が無難。
・奥壁は非常に脆いので登攀は要注意。プロテクションはハーケンかイボイノシシ。
・開津谷は意外とビバーク適地が少ない。976m地点の藪を刈り払うのが一番いいかも。あるいは堰堤近くまで下る。

 HRMTさん記録↓


眩耀のオバタキタン - 雪中松柏 愈青々