2019/12/28-30 槍ヶ岳 横尾尾根:その②

その①

weekendclimber.hatenablog.jp

からの続きです。

<12月29日>快晴
4:50横尾避難小屋→6:00ガリー取付→7:30P3/P4のコル→8:45P4→11:00横尾の歯/(ロープ2ピッチ)12:20→13:30天狗原分岐→14:50主稜線→15:50中岳→17:10飛騨乗越→17:25槍ヶ岳山荘


予報では30日から次第に天気が崩れるらしいので今日のうちに安全地帯、できれば南岳小屋まで進んでおきたい。
暗いうちに避難小屋を出発し、薄明るくなった頃から3のガリーを詰める。

GR000031

GR000035

 トレースを追うだけなので気は楽だが、やはりガリーは吹き溜まっているのか先行のラッセル跡は深い。急なガリーを詰め上がったところで大休止してアイゼンと登攀具を身につける。
P3/P4のコルからは急な登りが連続するが、ここは通過に苦労している記録もあったので少し警戒していた。今回は積雪が十分でないため藪が煩いが、草付や岩が露出した部分が多いのでアックスやアイゼンはよく決まる。

GR000043

GR000050

GR000053

途中の細かいアップダウンで一箇所懸垂下降をして、9時前にP4到着。今回は順調に来れたが、確かに少々いやらしい場所が続いた。おそらく半端に雪が乗った状態だと苦労するだろう。P4から先は比較的広い尾根となり、P5付近で森林限界を超える。この辺りは随所で幕営可能。この日は広く高気圧に覆われているため絶好のコンディションだが、冬型が決まった時は横尾谷からの強風で苦労するだろう。

GR000060

GR000065

GR000070

 P6を過ぎて広い尾根を進んでいくと尾根が急にクランクとなり、両側が切れ落ちた所が現れる。ここが横尾の歯だ。トレースがあればロープ無しで行けるかと考えていたが、見た感じがなかなか嫌らしいので素直にロープを出すことに。今日中に安全地帯まで行ける目処も立ちつつあるし焦ることはない。
1P目はFKDがリード。途中の岩峰を左から巻き、リッジを10mほど上がったところでピッチを切る。特に難しいところは無いが、リード中に小さな雪庇を踏み抜きかけてヒヤリとする。
2P目は僕が。ビレイ点からリッジを5mほど下るのが気を使ったが後は特に問題なし。その先もロープは不要に見えたのですぐにピッチを切る。これで核心と言われる横尾の歯は終了。両ピッチともビレイ点は岩角にスリングを掛けて作成、ランナーは灌木や残置ハーケンで対応した。

GR000077

GR000085

GR000087

 この時点で時刻は12時過ぎ。かなり順調なので今日中に南岳小屋までは入れそうだ。この時は槍ヶ岳山荘まで行く?なんて話は冗談の域を出ていなかったのだが・・・


横尾の歯から先は歩くだけだがアップダウンが多くて結構時間を食う。目と鼻の先かと思っていた天狗原への分岐まで行くと、あとは気合の300mアップで主稜線へ上がるだけ。

GR000095

GR000097

 このあたりから風の影響で雪も固く締まってくる。慎重にアイゼンを効かせて、最後は小さな雪庇を乗り越すと槍穂の主稜線へ出た・・・!

GR000100

GR000104

GR000111

 時刻は15時前。電波が入るので予報をチェックすると入山前より多少悪化し、どうも朝から吹雪になるようだ。今日は南岳小屋でのんびりしたかったが、条件が良いうちに頑張って槍ヶ岳山荘まで進むのが得策か。色々と話し合った結果、槍ヶ岳まで頑張ることにする。どう考えてもヘッ電確実な状況なので行動食をしっかり食べてから完全装備で再スタート。
ここから槍ヶ岳までは夏だとすぐの距離だが冬はやはり時間がかかる。中岳までの登りラッセルでまあまあ体力を削られ、続く下りの梯子で精神力を少々削られる。

GR000112

 吹き溜まりを除くと雪は固く締まっており、アイゼンの歯は少し食い込む程度。こんな時間帯に滑落でもしたらマジでヤバいので慎重に蹴り込んでいく。「あー南岳小屋にしとけば良かったかな」と言う気持ちも少し出てきたが、みんな元気だし焦らなければ大丈夫だろう。「動けるときに動く」バリエーションの鉄則だが、その見極めはいつも難しい。

GR000114

GR000115

GR000117

 大喰岳の手前でヘッ電を付け、真っ暗な中槍ヶ岳山荘に転がり込む。年末だし満員だと嫌だなと思っていたが、意外にも2人組が1パーティーいるだけ。話を聞くと彼らも横尾尾根との事。たしかに横尾尾根を登っている時から主稜線に人が見えていたが、南岳西尾根とかから来たパーティーかと思っていた。彼らは尾根を抜けるのに丸2日かかったらしい。マジで助かりました・・・!
さすがに冬の12時間行動は疲れた。たっぷり水を作ってゆっくり食事を摂る。2日連続の避難小屋は非常に快適で、温かい小屋の中で快眠できた。