雨飾山 前沢奥壁ダイレクトライン
■はじめに
雨飾山の南面に広がる前沢奥壁。小谷の標高1900m台の山とは思えない威容で、白馬や大渚山から眺める度に気になっていた。
前沢奥壁は1992年に左ルンゼ、2007年に右ルンゼがそれぞれ滑られているのは知っていたが、山頂からの滑走記録は未だに無い。これだけ目立つのにダイレクトルートが未滑走(のはず)という事実は非常に魅力的であり、数年に渡ってチャンスが来るのを待ち続けていた。
22年の1月は平日に雪が降り、週末に冷え込んだ晴れが来るという当たり月。斜度や標高から考えるとパウダーの時期が最適期と考えていたので、ストーム後の晴れ、それも気温の低い日を逃すわけにはいかないと考えていた。
予報を見た時点で家族と相談して週末のファミリースキーの予定を変更()。力強いメンバーも集まった。心配なのは降りすぎた雪の安定性だが…これは行ってみないと分からない。出戻りも覚悟してとりあえず小谷へ向かうことにしたのだった。
■記録
1月22日(土)快晴
5:40山田旅館→6:50雨飾山登山口→8:30荒菅沢→10:30笹平→11:15雨飾山/12:30滑走開始→13:15Co1200m→15:10南尾根→15:35雨飾山登山口→16:05山田旅館
6時前に山田旅館手前のスノーシェッドを出発。
林道はフルラッセルだったが、放射冷却で湿気が抜けたおかげか雪はとても軽い。50cm以上雪が積もったはずだが順調にキャンプ場着。独特の雰囲気があるところだ。
今シーズンはとても雪が多く、川もかなり埋まっている。渡渉場所を探してウロウロする必要もなく斜面に取り付くことができた。
登りに使ったラインは樹間・斜度が丁度良く、1本落としたい誘惑に駆られる。が、今日は長いので先を急ぐ。
帰りも思ったが、雨飾山はスキー向きの斜面が多い。春りにベースを張って、じっくり開拓するのも面白そう。
この日一番雪が良かったのはこの斜面だと思う笑
ここからはシールを付けて登り返し。フトンビシが格好良すぎる。風の影響かラッセルは比較的軽めで、順調に笹平まで上がることができた。
振り返ると金山、焼山方面の展望が素晴らしい。どこもスキー向きの斜面だ。
出発から約4時間半で笹平に到着。荒菅沢が垂涎モノのコンディションなのは確認済みだが、ここは初志貫徹で山頂へ。
写真だと風が強く見えるが、たぶん10m無いくらい。順調に山頂へ到着した。
さて、ここからは未知の領域。ドカ雪直後なので雪は慎重にチェックした。判断は…許容範囲!事前の打ち合わせ通り、ラインを2つに分けて滑ることにした。
まずは自分からドロップ。最初だけ様子見でロープを付けたまま滑ったが、カット気味に入ったり強めに踏み込んでも雪が切れる気配はない。これなら大丈夫そう。
南向きの斜面なので雪は重いが、十分快適な部類。パウダー風にも見える。
小尾根で一旦停まり、スキーヤーズレフトのルンゼへ進入。途中でスラフをやり過ごしながら狭いシュートを抜けて行く。
標高差で400mほど落とし、狭いシュートを抜けると核心は終了。あとは広いオープンバーンが広がっている。
前沢奥壁の山頂ダイレクト滑走に成功!天気は上々、雪質もこの手の斜面にしては快適でこの上ない好条件を当てられたと思う。
あとは事前に目をつけていたルートで南尾根へ登り返し、キャンプ場へ戻る。帰りの林道は思ったほど板が走らず、手漕ぎでかなり疲れた笑
無事に下山!
山頂からの初滑走。超、超嬉しかった!一緒に行ってくれる仲間がいないと成し遂げることはできなかった。思い出の山行になりました…。
■メモ
・記録がなく、核心部の状況が不明なためプロテクションとしてスクリュー、ハーケン、イボイノシシを持参した。(結果的には使用せず)基本的には不要だと思うが、斜面方位や標高的に草付きが多いので持って行くならイボイノシシか?
・日射を受けるため雪が緩みやすい。昇温による雪崩リスクや雪質変化を考えると気温の低い日に早出で狙うのが良いと思う。
・ルートは下記参照