10月19日ー20日 水無川オツルミズ沢

オツルミズといえば登攀系として名高い沢。以前から気になっていたが、今回メンバーにも恵まれて無事遡行することができた。

 

<10月19日>(曇り)

5:45水無川林道森林公園ー6:00オツルミズ沢出合-7:00カグラ滝上ー11:30サナギ滝上ー13:40 80m滝上-17:00駒の小屋

15分ほど林道を歩いてオツルミズ沢出合に到着。林道からもカグラ滝・サナギ滝が顕著に見え、身が引き締まる。

出合からカグラ滝までは水線通しに遡行するか、巻き道をたどって2通りの道がある。魅力的なのは水線通しのルートだが、翌日の悪天を考えるとできるだけ時間を稼ぎたい。今回は巻き道を使用してカグラ滝まで進んだ。

カグラ滝の下部は水流右をフリーで進み、次第に傾斜の立ってくるあたりでロープを結ぶ。1P50m。ブッシュ沿いを進むのだが、意外と渋かった。

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カグラ滝の上部は小滝が連続。釜を持つ滝が多いが、小さく巻けるものが多い。

小滝の連続する区間を終え、短い河原の先で沢が大きく屈曲すると極狭ゴルジュが立ちはだかる。中の様子も伺えないほどの様相に時間がかかると判断し、右岸から高巻きに入る。(ゴルジュ内を突破した記録もある)

ゴルジュ帯の始まり。

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ゴルジュを避けるため大きく巻きたかったが、上に追い上げられそうだし、沢を観察する限りでは滝も登れそうと判断し、ゴルジュ帯を水平距離で30mほど進んでから下降する。50mダブルで一回+50mシングル一回の懸垂で沢へ復帰する。

コチラが高巻き中に見た連瀑帯の様子。上の方に見えるヒョングリ風の滝は水流右を登ることができる。

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この先の30mナメ滝は水流左をフリーで快適に登る。上部は次第に傾斜が立ってくるのでブッシュを絡めて処理。

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30m滝を登ると目の前にはサナギ滝が大きく立ちはだかる。5段200m、さすがに圧倒的だ。

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 最下段は直登不可能なので定石通り右岸から高巻き。みんな考えるのは同じということで、うっすら踏み跡が付いていた。

最下段上部からは水流左の草付きの壁を快適に登っていく。傾斜は強いがホールドは豊富で岩も固く、安心できる。Ⅲ級くらい?

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水流左を快適に登って行くとあとは最上段を残すのみ。水流へ向かう細いバンド状(こちらが一般的)と、残置のリングボルトが2つ付いた垂壁を見比べて、どうせだしってことで垂壁を選択。

ジャンケンに勝ったのでリードさせてもらったが、かなり渋い。時間優先なら水流沿いに登るべきだろう。灌木でピッチを切ったあと、比較的新しいスリングのかかる懸垂支点から10mでサナギ滝の落ち口に降り立った。

これで一段落と思いきや、サナギ滝の上部もゴルジュが続き、ところどころ泳ぎでの突破を強いられる。この時期の泳ぎは頭までジンジンくる・・・。(あとでわかったのだが、前日に稜線で雪が降ったので、雪解け水が流れ込んでいたらしい)

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連続するゴルジュ帯は次第に狭く、突破が困難になる。左岸の岩壁が滝上まで被さる6滝で右岸の高巻きを開始。高巻き開始地点に残置シュリンゲあり。 ここは小さく巻いていく。この先で小滝を処理していくと、80m滝の手前で崩壊した雪渓が登場する。

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80m滝の登攀は水流右が簡単そう。崩壊した雪渓を利用して左岸のバンドへ乗り移ることができた。バンドから水流へのトラバースが少々悪いのでロープを使用。

遠くから眺める80m滝は寝ているのだが、近づいてみるとなかなかの傾斜。ロープを出しても良いぐらいの登りなのだが、これまでの滝登りで麻痺してしまったのか、結局落ち口までフリーで登ってしまった・・・。少し反省。Ⅲ+ぐらいだろうか。

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80m滝の先からようやく沢は癒し系に変わってくるが、小さいながらも渋い滝が多く出てきてまだ緊張は解けない。

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すこし進むと広河原風になる。増水の心配がなければ幕営可能だろう。

このあたり、左岸側は大きくスラブが立ちはだかるが右岸側はすぐ上に尾根(郡界尾根)が続いている特異な様相。

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郡界尾根を挟んで向かい側は「金山沢奥壁」だ。いつか訪れたいと思うが・・・まだちょっと怖いかな。

ふたたび両岸が切り立ってくると雪渓が沢を埋めている。できれば巻きたいが、両岸ともに高巻きは時間がかかるだろう。幸い雪渓の底は厚い。すこし考えた末、雪渓上を歩くことにした。シュルントもほぼ無いため、両岸への乗り移りもスムーズだ。

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この辺りまで来て時間は16時前。すでにほとんどの悪場は抜けたため適地があればどこでも泊まってしまいたいが、20日未明からは雨の予報。話し合いの末、今日中に稜線に抜けて駒の小屋に泊まることにする。(翌日の増水っぷりを見るに、これで正解だったと思う)

あとは疲れた体に鞭打って稜線まで登るだけだ。ナメ滝に癒やされながら頑張って体を動かし続け、17時ジャストに駒の小屋に到着。

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稜線には新雪が・・・道理で水が冷たいわけだ。

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小屋には10名前後の方が泊まっていた。なんでも20日が小屋締めだとか。ラッキー。

激辛レッドカレーを食べて19時に就寝。床に敷いたスタイロフォームと毛布のお陰で爆睡だった。

 

<10月20日>(雨)

6:15駒の小屋-7:15グシガハナ-9:15十二平-9:40駐車場

前日19時就寝→5時起床。10時間睡眠をかましてしまった。

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雨の降る中越後駒ヶ岳をピストンし、あとはグシガハナ経由で下山した。かなり急で滑りやすいルートなので、怪我をしないよう注意しながら下山する。十二平まで約3時間。

ちなみに下山中に見たオツルミズ沢出合と、前日の出合の様子。

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10月20日の六日町の気象データを観る限り、累加雨量は10時の時点で8mm。山中でも小雨が降る程度だったんだけど・・・ウワサに聞く通り増水は強烈。雨の時は絶対入らない方が良いですね。

六日町駅前の湯らりあで風呂を浴びて帰京。15時には帰宅出来た。

 

 <ギア>

50mロープ×2、10mお助け紐×1、カム(小サイズを4つほど)・ハーケン若干、スリング(60cm~240cm各3本程度)、ガス250mlなど。

 

<ウェア>

上半身:ファイントラック フラッドラッシュスキンメッシュ、フラッドラッシュジップネック

下半身:タイツ(CW-X)+半ズボン

足回り:沢スパッツ、化繊製靴下、渓流シューズ(アクアステルス底)

防寒着:ウールの下着上下、パタゴニア ナノパフプルオーバー

・どうしても水に浸かる場面があるので、多少の防寒対策は必要か。

・メンバーは全員アクアステルス。

 

<メモ>

・カグラ滝への巻き道は、オツルミズ沢出合を過ぎてすぐ、林道脇にある色あせたテープが目印となる。踏み跡は明瞭だが所々悪いので注意。

・総じて高巻きは悪いので、できるだけ水線通しに遡行したほうが良い。

・滝はどれも傾斜が強く、Ⅲ級程度の登りを無理なく登れる実力がないと延々とロープを出すことになる。

・岩は固く、プロテクションも決めやすい。

・幕営適地、薪ともに少ない。

・大滝ではAUの電波が入った。(カグラ滝、サナギ滝で確認)

・増水はかなり早い。雨予報の時は入渓しないほうが良い。

 

オツルミズは「落つる水」が語源だとか。その通り、源頭部までひたすら滝が連続する渓相は圧巻で、写真を見てから憧れ続けたルートの一つだ。

今回はメンバーに恵まれてモチベーションも非常に高かったのだが、出発直前まで不安定な予報に転進するかどうか悩んだ末の山行だった。

蓋を開けてみれば 遡行に成功したものの、日曜日の増水具合を見るにギリギリの条件だったのは間違いないだろう。「とりあえず入山口までは行ってみる」がぼくのポリシーだが、今後はこの辺りの見極めをうまくしていかないと長生きできないよな、と思った次第。

それでも、目立ったルートロスもなく1日で沢を抜けられたのは自分にとって大きな自信になったし、今シーズンの集大成として満足の行く沢だった。これからしばらくは雪のシーズン。今年の沢は色々と収穫が多かったが、こっちでも何か大きなルートをやりたいなあ。

<昨年の黒部横断>f:id:wak2006:20130316120816j:plain